グルテンフリーはかつて、セリアック病と呼ばれる深刻な小麦アレルギー患者向けの特別な食事法でした。その頃セリアック病は主に、まだ 成人ほど腸壁が整っていない幼児を中心に発症していました。ところが現在アメリカでは、成人を含めて約133人に1人がセリアック病を疾患していると言われています。メリーランド大学セリアック研究所のFasano博士によると、100人中6〜7人が小麦を食べて何らかの不調を感じるグルテン過敏症患者であると見積もられています。

欧米でグルテンフリーが大々的に普及してきたのは、CODEXやFDAがグルテンフリーの表示基準を定めた2013 年頃でしょう。私もその少し前にWilliam Davis 医師が書いた『Wheat Belly』（Rodale Books）を読み、グルテンが体に与える影響を懸念し始め、避けられる範囲でグルテンを避けるようにしていました。アメリカ、特に健康志向が強いニューヨークという都市で生活していると、グルテンフリーに対する認識と需要が年々高まっているのを肌で感じます。スーパーマーケットに行けばグルテンフリーのコーナーが設けられており、レストランやカフェでもグルテンフリーのオプションが選べたりします。グルテンフリー生活を実践するには大変恵まれている環境と言えます。そういえば、ヨーロッパに旅行した時もグルテンフリーが普及しているのを目の当たりにしました。小麦の消費量が多い国ほどグルテンフリーが盛んになっているのはなんとも皮肉ではありますね。

さて、そんな私がグルテンフリーに本気で取り組みだしたのは、実はつい最近のことです。アメリカで3ヶ月にわたり製パン研修を受けた時に、リウマチを発症したのがきっかけです。はじめは原因がわからず、年齢のせいかと思ったりもしました。しかし、研修で製造していたパンは小麦が原料の一般的なパン。それを毎日こねて焼いて試食して…。もしかしたら、そこに入っていたグルテンが原因？　製パン研修が終わっても、手足の関節の痛みは引かず、関節の可動範囲が徐々に狭くなりましたが、製パン研修が終わるや否や、徹底的にグルテンを排除する生活を続けました。するとどうでしょう。半年以上が過ぎた頃にリウマチ症状はすっかりなくなっていたのです。

いま思い起こせば、過去にアトピー性皮膚炎と過敏性腸症候群をリビングフードで改善させた時も私の食卓から小麦は消えていました。リビングフードは加熱をしない料理ですので、必然的に小麦は使わなくなっていたのです。となると、私の体調不良はやはり、小麦（＝グルテン）に起因していたかもしれないと思わざるを得ません。

グルテンフリーは心や脳の健康にも効果的と言われています。私のように体調不良を抱えていなくとも、パフォーマンスを上げて、人生をもっともっと輝かせたい方は試してみる価値があるのではないでしょうか。